トタン屋根を叩く雨音や、岸に打ち寄せる穏やかな波の音を聞くと、なぜか心が落ち着く。それには理由があります。2021年に 米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)に掲載された研究レビューでは、自然の環境音が健康を改善し、ストレスやイライラを軽減し、気分を自然に高めてくれることを示す証拠が示されています。
テクノロジーは、正しく使えば、心身の健康を大切にする助けになります。カスタムの環境音があれば、忙しいオフィス、行列の中、渋滞の車の中にいても、まるで自然の中にいるかのような感覚を得ることができます。でも、あの音はどうやって作られているのでしょうか?人の手で作られているのか、それともスタジオで生み出されているのか?マイクの向こうで、誰もが自然の“音の薬”を楽しめるようにしている魔法使いは一体誰なのか。Loftieの場合、それが音響デザイナーのJosh Riglingです。
Joshに、音の録音とミックスの方法、ミニマリストとマキシマリストの音響デザイナーの違い、そして彼自身を眠りに誘う環境音について話を聞きました。
Loftieでのあなたの役割は?
私はLoftieの音響デザイナーです。この役職に就いたのは2021年9月からで、Loftieチームの中核メンバーの一人です。ほとんどのサウンドコンテンツを統括し、「環境音トラック」の大部分と、一部のアラーム音を制作しています。また、Loftie専用コンテンツの開発に向けて、パートナーのサウンドクリエイターとも協力しています。
さらに、Loftieの音響がどのように機能するか、特にファームウェア関連の技術面についても意見を出しています。これには技術やコンピュータサイエンスの知識と応用が必要です。
最後に、Loftieのために技術図面やイラストの制作も担当しています。例えば、クロックとランプの新しいユーザーマニュアルには私の描いた図が使われていますし、ニュースレターやInstagramのコンテンツにも一部使われています。
これまでのキャリアについて教えてください
この10年間、私は主にIoT(モノのインターネット)分野で働いてきました。ニューヨーク、ロサンゼルス、ヨーロッパを拠点とする複数の企業に携わり、その中には to.be、Mona VR、Giphy、Electric Objects、Noow Art、Elementum Art、Digital Objects、Infinite Objects、Odaなどがあります。これらの企業のほとんどは、ソフトウェア製品に加えてハードウェア製品も手がけていました。
私はネットアートの黎明期である2011年から、Dump.FM、Bog.Jollo、Qloppi、Sock.Chatのメンバーとして活動に関わってきました。私が作成した オリジナルのGIF画像は1万点近くにのぼります。2015年にGiphyへ最初期に招待されたアーティストの一人として、私の 公開コレクション(規模はそれほど大きくありませんが)は今や総再生数が数十億回に達しています。
趣味では 音楽活動やフィールドレコーディングも行っています。不思議なことに、私のファン層は主にイタリアに集中しています。2016年からライブ活動を続けており、コロナ禍の間はずっとClub Antibody(オンライン限定)の常連メンバーでした。私の 音楽は、フィールドレコーディング、アナログシンセサイザー、そして手作りの弦楽器を組み合わせたものです。
カスタム環境音を作るプロセスを教えてください
私にとって環境音やフィールドオーディオの録音は、(都市部でない限り)人里離れた場所への移動から始まります。最低でも6つの入力端子を持つレコーダーを設置し、さまざまなマイクを取り付けます。その後、たいてい30分ほど録音します。時には近くの場所に移動して、さらに30分ほど録音することもあります。録音が終わると、パソコン上で長い時間をかけてトラックをミックスし、録音した場所を100%忠実に再現した、完璧にループする約10分間のトラックを作り上げます。
音響デザイナーによってプロセスは違うのでしょうか?
まったく違います!音響デザイナーは一人ひとり、音を集めて作り上げる方法がまったく異なります。
私の場合は、マイクの種類、音質、録音時間のいずれにおいても、かなり冗長なやり方をしています。フィールドに出るときも、とんでもない量の機材を持ち歩きます。おかげで腰は悲鳴を上げていますが、その分、驚くほど多様な音を捉えることができます。
録音は32ビットのRAWオーディオ形式のみで行っています。これはカメラや動画のRAW形式のようなものです。人間の可聴域を超えた部分にも音声データが記録されるため、急に大きな音や小さな音が入っても、通常であれば使えないような音を後から復元して活用できます。個人的には、これはとても優れた方法で、標準になるべきだと思っています。ただ、そのために必要な機材はかさばり、複雑で、高価なため、参入障壁があります。
基本的な立場としては、私はマキシマリストです。ミニマリストは一般に「ドロップリグ」と呼ばれる手法を使います。これは小型のハンディレコーダーを防水バッグに入れ、2本の小さな無指向性(オムニ)マイク、あるいは動画インタビュー用のラベリアマイクを取り付け、一つの場所に設置して24時間以上録音するというものです。私もこの手法を使うことはありますが、ループ用のトラックを作る場合、収録した内容だけでは調整の余地が足りません。
音の違いと、それが呼び起こす感情には心理学的な背景があるのでしょうか
はい、あります。多くの人は無意識のレベルでこれを理解していると思います。実際、これに関する研究もいくつか存在します。
例えば、海の音は多くの人を早く眠りに誘う傾向があります。それは、穏やかな海であれば、心拍が波のリズムに同調するからです。一方で、コオロギの音や森の音には特定のリズムはありませんが、騒がしい心を静める効果は抜群です。何度も見た好きなテレビ番組を流しながら眠りにつくという人からよく聞くのですが、自然音を聞きながら眠るのもそれととても似ているそうです。違いは、テレビのように光害がないという点です。
現在私たちが取り組んでいる音の中には、特定の音域を狙うことで、自然に眠気や覚醒を促すものもあります。これについても研究が進んでいて、自然音とミックスすることで、その効果はかなり強力になります。実は私自身も、眠るときにこれを使っています。
環境音は私たちの心身の健康にどのように良い影響を与えるのでしょうか
これについても、いくつか研究があります。私はその結果に完全に同意しています。森の中を散歩すると、ストレスホルモンが減少することはすでに知っている方も多いかもしれません。海のそばに座ったり、窓を開けて仕事をしたりするときも同じです。人工的な音であれ自然の音であれ、私たちを取り巻くすべての音には、それぞれ固有のリズムがあります。数年前、世界各地の都市のBPM(1分間の拍数)を調べたアーティストがいました。
ただ、周囲の音というのは意外と見過ごされがちだと思います。私にとって、フィールドで録音することは、これまで経験した中でも最も心が落ち着く、瞑想的な行為の一つです。レコーダーとヘッドホンを身につけて座ったり立ったりしながら、時間を忘れてしまうことも何度もありました。注意深く耳を傾けることは、心にとても良い効果をもたらします。Loftieでこの仕事にプロとして取り組んできたこの1年で、私自身のメンタルヘルスと睡眠の質はかなり改善されました。
他に付け加えたいことはありますか?
この分野には、健康全般に貢献できる大きな可能性があると信じています。何であれ、注意深く耳を傾けることで、周囲の世界に対する見方が変わります。ほんの数分間、立ち止まって本当に耳を澄ませるだけで、これほど多くの音が聞こえてくるということに、驚かされるはずです。
私自身の個人的な目標は、丁寧に作り込んだ音を通じて、人々の睡眠中の時間も、目覚めている時間も、両方支えていくことです。















